「一護受15TITLE」(配布元




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 手元の書類をやや乱雑に整理しながら、檜佐木は無意識のうちに一護の姿を思い浮かべる。それは四六時中いつだって檜佐木に訪れる衝動で、思いの深さを自身に思い知らされる瞬間だ。
 出会って、想いを告げて、口づけをするようになって。想いの強さと比例して欲もどんどん深くなる。
 想いを通い合わせたわけでもないのに。
 怖いと言われた。わけがわからないとも言われた。口づけだって檜佐木が無理やり一護を掻き抱いてから行うもので、少年と青年の狭間の未発達な身体がいつだって恐怖に強張っていることを知っている。それでも我慢できないのは、あまりにもこの想いが深いせいだ。
 先日も、また怖がらせてしまった。相手はまだまだ子供で、帰らなければいけない場所があることをわかっているにも関わらず、帰したくないと思った。腕の中に留めたまま、欲に任せてその身体を思い切り堪能してやりたい、と。
 随分と怯えた声をしていた。それにさえ煽られるのだから性質が悪い。
 首筋に噛みついただけで放してやったが、それでさえ相当な忍耐力が必要だった。どうしようもない程、惹かれている。
 向こうが子供だとわかっていても、大人のふりして優しく愛するようになど出来ない。もっとこの感情は生生しく激しいもので、檜佐木にもコントロールしようがないものだ。
 一護にとっては災難でしかないだろう。
 しかし相手も悪いと思う。折角なけなしの理性をはたいて檜佐木が一護と距離を置こうとしたこともあったのに、そんなことをされるくらいだったら近づくのを許すほうがマシなどと言う。口づけだって怯えながらも完全に拒絶することはない。
 だからこういう大人が調子に乗るのだ。
 知らず、ため息を吐いていた。


 「・・・疲れているのかい、修兵。」
 

 ハッと気づいて、顔をあげた。忘れていたがここは東仙の隊首室で、整理している書類だって東仙に回すものだ。敬愛する上司の前で見せた失態に、ばつが悪そうに檜佐木は頭を下げる。
 「・・・すいません。」
 「いや、構わないよ。そろそろ時間も遅いし、あらかた片付いたろう。今日は早めに家に帰りなさい。」
 申し訳ないような気もしたが、これ以上上司に要らぬ気を遣わせるわけにもいかず、周辺のものを整頓してから東仙の前を辞去する。
 帰り際、「一護君をあまり困らせないように。」という言葉まで贈られて、敵わないと苦笑する。下手をするとため息の理由も悟られているのかもしれない。おまけに、その言葉には従えそうにない。
 噛みついた、一護の首筋を思い返す。かなり強めに噛んだそこには、くっきりと跡が残ったはずだ。あれがまだアイツの首筋に残っていればいいと願う。そうして自分の想いの強さを思い知れば、いい。
 全くどうしようもないものだと思いながら、家路につく。その日はやはりだいぶ疲れていたのだろう。もしくは、あまりにも一護のことに想いを馳せすぎていたのだろう。普段なら気づくその霊圧に、檜佐木は全く気付いていなかったのだから。
 だから今までずっと想いを馳せていた人物が、まるで自分を待ち伏せするように立っているのを見て、檜佐木は驚きに目を見開いた。
 「一護・・・。」
 「・・・よう。」
 気まずそうに、片手をあげた少年の首筋に張られたガーゼを、すぐにでも剥がしてあの日の噛み跡を確かめたいと眩暈とともに強く思った。









<7>に続く(準備中)







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