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 ああ、彼の名前が知りたい。

 ついでに言うなら彼の好きなもののことだとか趣味だとか笑った顔だとかそれ以外の表情だとか肌の感触とかそれはもう余すことなくいろんなことが知りたい―――なんて、どうしようもない衝動に襲われて、京楽は1週間前にくぐった”存在しない道”の前に立った。
 再びこの道の前に立つ間中、彼のことばかりが頭の中にいっぱいで、己の狂いっぷりにはもはや苦笑しか浮かべられない。
 彼に会いたい。話がしたい。それに、また餓えたりなんかしていないだろうか。まして他の男の(或いは女の)血なんて飲んでたら、自分はちょっと、否、かなり暴走してしまうかもしれない。
 物騒なことを考えつつ、京楽は周りに人がいないことを良いことに、”存在しない道”の入口らしき場所に話しかけた。
 「そこに隠れてる人に会いに行きたいんだけれども、ダメかな?」
 反応はない。けれども京楽には彼がここにいるとわかっていた。霊感だとか第六感があると思ったことはないが、なぜだろう。酷く、惹かれるのだ。
 「心配なんだよ。また倒れたりしてないよね?何せこの前もちょっとだけしか僕の血飲ませてあげらんなかったしさ。」
 少しだけ、風景がぶれる。この”存在しない道”も頑なに血を飲もうとしない彼を心配しているのかもしれない。
 「頼むよ、ちょっとだけでも。この前の失礼も謝ってないし、彼が了承してくれるんなら、僕の血をいくらだって飲ませてあげるよ。あの顔色じゃそろそろ限界が来てるだろう?」
 少しも悪いと思ってないくせに、しかも了承あるなしに関わらずこの前と全く同じ方法で血を飲ませようと目論んでいるくせに、いけしゃあしゃあと京楽は笑顔でそう言った。
 まるで迷うかのように風景が歪んだり元に戻ったりを繰り返したが、やがて京楽を招くように、先ほどまではなかったはずの風景が目に前に広がる。
 勝った。
 心の中でガッツポーズをしつつ、「や〜、ごめんねぇ。」なんてちっとも悪いと思ってない態度で京楽はそこに足を踏み入れた。得体の知れない場所への恐怖は微塵も感じない。ただ彼にもう一度会えるのだという嬉しさばかりが胸中を満たす。

 「「―――あ。」」

 声を上げたのは、おそらく同時だっただろう。ちょっと歩いただけで見つけた彼は、相変わらず顔色は良くないものの先日のように倒れるほどではないらしく、座ってコーヒーらしきものを飲んでいた。
 京楽の顔は再開できたことに対する満面の笑み、対してヴァンパイアの顔はまるで怪物か幽霊にでも会ったような驚愕に彩られた。
 京楽はそんなヴァンパイアの動揺などさらりとスルーして、両手を拡げて彼を抱きしめんとヴァンパイアの元へ一直線に駆け寄る。

 「やぁ!会いたかったよ僕の愛しの子猫ちゃん!!」

 その日”存在しない道”にかなり激しい殴打音とともに、一人のヴァンパイアの「帰れえええぇぇぇぇッ!!」という心からの叫び声が響き渡ったのは、言うまでもないことである。









反応が嬉しくて続きを書いてしまいました、京楽×ヴァンパイア一護もの。
しかしまたしても一護の名前を出せず・・・!(悔)
そして相変わらずの京楽さん。押せ押せな彼にいつかきっと一護さんはほだされてくれることでしょう。

前にかいたときよりかなり時間がたってるのでおかしなとこがあると思います。そのときはこっそり教えてくださいませね。







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