空の向こうから










新着メールが1通届いています。













































『 送信者:フェリシアーノ


 Ciao! 久しぶり、菊。
 今日のイタリアの空は とても綺麗に晴れたよ。
 
 聞いて聞いて!昨日の夜、俺 菊の夢を見たんだ。
 俺は相変わらず白旗を持って 逃げてばっかりなんだけど、泣いた俺を菊が優しく慰めてくれるんだ。
 まるでルートと3人で過ごしてた頃みたいだったよ。
 
 でね、今朝起きたときその夢を思い返して、気づいたんだ。
 俺 菊のことが大好きだよ。
 夢から覚めたとき、菊の顔が見たくて仕方がなかった。
 会って、ハグして、キスしたいなぁって。
 もちろん挨拶じゃないよ!
 ちゃんと、たった一人の愛しい人っていう意味でだからね!
 
 菊のすっごく優しいところとか、可愛いところとか
 控えめなところも大好き。
 黒くてさらさらの髪も 宝石みたいな瞳も バター色の肌も 綺麗だなぁって思うし、菊が笑ってくれると、すっごく嬉しい気分になる。
 あと 戦うときの凛とした姿も格好いいよね!
 料理も上手だし、いろんなこと沢山知ってるし
 ずっと傍にいたいし、傍にいてほしいと思ってる。

 ああ どうしよう!菊が好き。大好きだよ。
 でもやっぱりメールじゃ上手く伝えられないや。
 こういうのはちゃんと顔を見て伝えないとね!
 今からそっちに行くよ。
 菊の好きそうな花を持っていって、頑張って告白するから、ちゃんと聞いてね!

 それじゃ、また日本で。
 早く菊に会いたいな。』












その後の二人






































 「菊〜!菊〜!お願いだから顔を見せてよ〜!!」
 ヴェ〜!!と相変わらずの奇声を上げながら、フェリシアーノがこの家唯一の木造の扉を叩いている。
 本当は家の中にも上げたくなかったのだが、玄関先で色々と騒がれてはご近所迷惑だし、それに何より。
 「菊に愛の告白をしに来たのに、これじゃ意味がないよ〜!」
 こんなことを外で叫ばれては、恥ずかしくて暫く外を歩けやしない。
 かといって素直に顔を出す勇気もなく、襖ばかりのこの家で一室だけある鍵のかかる部屋に閉じこもっているのだ。
 「あああ貴方ねぇ・・・!あんなメールを送られて、私にどんな顔で会えって言うんですか!」
 「ヴェ〜、いつもの可愛い菊でいいよ?」
 「・・・ッ・・・鎖国したい・・・!!」
 思わず漏れた言葉に一層激しくなる叫びと名前を呼ぶ声。
 こちらだって怒っているわけではない。ただ、とてつもなく恥ずかしい。朝一番であんな熱烈なメールを目にした老いぼれのライフは限りなくゼロに近い。
 メールでさえこんな状態なのに、面と向かってフェリシアーノに愛の言葉を囁かれたら一瞬にして昇天してしまえる自信がある。
 扉の向こうが少し静かになったと思うと、ぺたりという音。フェリシアーノがそっと扉に身を寄せたらしい。
 「菊〜・・・、顔が見たいよ?」
 それはずるい、と思った。菊はフェリシアーノの困った声に弱い。甘えられると、甘やかしてしまいたくなる。そうした後に見せてくれる、フェリシアーノの満面の笑顔が大好きなのだ。
 「ねぇ、菊。鍵を開けて?」
 菊は座り込んだ自分の体をぎゅっと抱きしめた。出て行きたくない。真っ赤に染まっているであろう顔を晒したくない。
 でも、彼のお願いを聞いてしまいたいとも思う。
 きっとこの籠城は長くは続かない。今すぐ彼の望み通り鍵を開けてしまいたくなる自分を押さえながら、どういう反応を返せばいいのだろうと菊はひっそりと頭を抱えた。







フェリシアーノ×菊も大好きです。というかやっぱり枢軸が好き。



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