「一護受15TITLE」(配布元



※本誌連載の早めから書き出した作品なので捏造ばかり
※東仙さんが藍染さんについていってません
※何より修兵さんがあまりにも偽物









<1>


 旅禍として侵入してきた少年の名とある程度の情報は、あらゆる場所でいろんな人間から聞いていたが、実際檜佐木が本人の姿を見ることが出来たのは、既に事件が終わった後だった。
 侵入者としてやってきた彼らは、瀞霊廷の裏に潜んでいた闇を結果として引きずり出し、今や完全に肯定的とは言わないまでも、ある程度死神たちから受け入れられている。何せ事件に中心的に関わった人物―――しかも一人は死神の能力さえ持っているというのだから、瀞霊廷も彼らを旅禍のまま処分してしまうわけにはいかなかったのだ。
 その死神の能力を持つという黒崎一護という名前は、死神たちの間でよく囁かれた。人間でありながら死神の能力を持っているというだけでも前例がないのに、その霊圧は隊長クラス。既に卍解も習得しているという。現に騒動中、斑目・阿散井の二人を倒し、あの更木と相打ちになった挙句朽木白哉に勝利したというのだから驚きである。
 瀞霊廷では実力、つまり霊圧の量や斬魄刀の扱い・戦闘能力が全ての価値を決める。その点を踏まえた上で、黒崎一護という人物は他の死神たちの興味を惹くのに十分な要素を兼ね揃えていた。
 しかし檜佐木は、その騒ぎを冷めた目で見ていただけだ。実力をもった死神が現れるのはいいことだが、まず混乱のあまり機能を果たさなくなった瀞霊廷をまずどうにかするべきだろうと考えていた。
 だから今まで件の黒崎一護に会おうという努力は一切していなかった。が、運命のいたずらか。来るべき日は着々と足をしのばせ、何の心構えもしていない檜佐木の背後に迫ってきていたのである。




 * * *




 そこに立つのは圧倒的なエネルギーの塊だった。髪の色も目つきの鋭さも霊圧の大きさも輝きも、彼を形成する全てのものが生きているのだと声高に叫んでいる。
 檜佐木は初めて黒崎一護という存在を目の前にして、そのエネルギーが己の肉体を無意味な存在とし、自分のむき出しの魂を抉り取っていくのではないかという馬鹿げた錯覚を覚えた。それくらい、衝撃を受けたのだ。
 近づいてよく見れば、思った以上に華奢な身体だ。顔だっていまだ幼さを残している。確か実年齢は15歳だと聞いた。
 まだ、子どもだ。
 ほんの、子どもなのに。
 何て圧倒的な存在。彼を一目見た死神が、いや、たとえ直接見たことがなくても騒がねばならなかった理由をつくづく思い知った。
「―――お前が、例の黒崎か。」
 気がつけば、声が出ていた。突然声をかけられた少年は、訝しげに檜佐木を見る。
「・・・アンタが誰を思い浮かべてるのかは知らねーが、とりあえず俺の名前は黒崎一護だな。」
 強気な性格がよくうかがえる、可愛さの欠片もない言い方だ。普段の檜佐木なら多少腹も立てただろうが、目の前の少年のことだと思うと、ただ気分が良かった。
「ふ、ん。俺の名前は檜佐木修兵だ。九番隊の副隊長をしている。」
「檜佐木、修兵・・・。」
 鸚鵡返しのように、彼に名前を呼ばれたときの激情を何と呼べばいいのか。その目でみつめられ、その声で自分を呼ばれると、まるで初めて自分がそこに生きているのだと、唐突に気付かされたような気がした。
 これが欲しい、と、頭の隅から切実な叫びが聞こえてくる。
 けれども、檜佐木は一切その動揺を顔に出すことはなかった。相変わらず涼しい顔をしてそこに立っていたから、きっと一護は何も気付くことがなかっただろう。
 そのとき、遠くから一護の名前を呼ぶ声が聞こえた。
 「あ、俺、行かなきゃ。」
 「・・・ああ。」
 口では返事をしながら、檜佐木は自分から一護を離そうとした輩を殺してしまいたい危ない気分に陥っていた。今日初めて会ったというのに、もう彼が近くにいないことが耐えられなくなる。



 短い邂逅を終え、走っていく一護の後姿を見送りながら、多分こんなのを一目ぼれというんだろうな、と檜佐木はやけに冷静に考えていた。



<2>に続く









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